インバルの「夜の歌」

(文中の敬称は省略しています)


●96/11/09 インバルによる都響マーラーチクルスの最終年。 番号順に進んできたこのチクルス、今年の最初の曲は「夜の歌」とタイトルが付けられた交響曲第7番である。 インバルの登場とあって東京文化会館は9割程度の入り。

 この7番はマーラーの交響曲の中では最も人気のない曲に数えられるけど、個人的には好きな曲のひとつで、 変な趣味かもしれないけどあのカウベルの音がたまらない。カウベルを家の飾りにしたいので探しているのだけれど見つからない。 どこかに売っていないでしょうか?・・・なんて余計なことは抜きにして、早速演奏の方に!

 インバル=都響のマーラーのというと、昨年の5番の圧倒的名演が記憶に新しい。 ダイナミックレンジをpppの方に拡大し、都響はとぎすまされた緊張感の中でインバルのタクトに応える。 昨年秋、インバルはかつての手兵フランクフルト放送響と来日したけど、 その時のマーラーの5番が弛緩した演奏だったのに対し、都響の方は遙か高みに達していた名演だった。

 今年の演奏も期待を持って聴きに行ったのだが、昨年の5番の水準には達していなかったけど、 7番の演奏としては充分に聞き応えがあるものだったと思う。まず最初に感じたことは、音がでかい。 昨年はダイナミックレンジをppの方に拡大したアプローチだったと思うけど、今年は逆でffの方に拡大しようとする意図が見える。 都響も破綻なく演奏し、金管なんかは普段はヘロヘロなことが多いのに、テンションが高くミスも最小限に抑えた。 弦楽器に関しては、都響の水準は高いので安心して聴いていられる。

 第一楽章で音楽が流れていなかった不満はあるけど、2楽章以降は見事な出来。 第5楽章になって金管はかなりへばって来たけど、聞き応えがあるフィナーレ。これで8番、9番が楽しみになった。

 ちなみに来年は5月に来日し、Aシリーズで「未完成」とブルックナーの3番(原典版)、Bシリーズでマーラー交響曲10番「クック版」、 芸術劇場シリーズでベートーヴェンの5、6番と決まったようだ。