レニングラード・フィル

(文中の敬称は省略しています)


●1996/10/25 都市の名前はすでにサンクトペテルブルグに変わっているのに、なぜか「昔の名前ででています」レニングラード・フィル(指揮:テミルカーノフ)を聴きに東京芸術劇場に行く。 ムラヴィン時代を知る人は、その実力の低下を嘆いているみたいだけど、私はその時代は知らないのでそーゆー比較はしない(出来ない)けど、確かにDGのチャイコ4〜6番の録音なんかは凄いと思う。 その時代の名前を使った方が商業的にやりやすのかもしれないけど、あんまり潔いやり方だとは思えない。 チケットもかなり売れ残っているみたいで、チラシが公演直前までまかれていたけど、この日の公演はSOLD OUT! なぜならソリストに諏訪内晶子を起用したからである。

 曲目は最初にR・コルサコフの序曲「ロシアの復活祭」。サンクトペテルブルグはロシアの中でもヨーロッパに最も近い所にあるけど、こーゆー曲を演奏するとやっぱりロシアのオケなんだなぁ・・・と思う。 北の国独特の低くたれこめた曇り空のようにくすんだ音色はとても魅力的。金管、木管も安定感があるのはもちろん、巧いし、音が抜けきっている。これは日本のオケでは絶対に出せない音だ。

 続いて諏訪内のメンデルスゾーンのVn協奏曲。諏訪内は黒っぽいドレスで登場するとひときわ大きな拍手が起こる。 諏訪内の音は、6月にリサイタルを聴いたときの印象と全く同じ。細くて密度が高い音はとてもきれいだけど、個人的な好みから言うと音色の陰影感、奥行き、膨らみなどは決定的に不足している。 表現力でも、速いパッセージを突進していく時のテクニックには目を見張るものがあるけど、それ以外の部分、たとえばゆったりした楽章になるととたんに単調になってしまう。 まだまだ成長の余地があると思うし、それが可能な逸材だろうなぁ・・と思うので、今後に期待。オケのサポートも問題は多く、メンデルスゾーンの音としては粗野に過ぎた。

 休憩後はムソルグスキー=ラヴェル「展覧会の絵」。 テミルカーノフはかなり工夫をしていたように感じたけど、音楽としては結実していなかったと思う。 このオケは89年、93年と聴いているけど、聴く度にスケールが小さくなっていて、キエフの大門なんかはこのオケだったらもっと凄まじいスケール感を出せるんじゃないだろうか。 アンコールは「見えざる町キテ−ジと乙女フェブロ−ニャの物語」前奏曲。