KSTのモーツァルト

(文中の敬称は省略しています)


●96/10/05 紀尾井ホールのレジデントオーケストラ、紀尾井シンフォニエッタ東京の定期演奏会。 曲目はオール・モーツァルトでディベルティメントK.138、ピアノ協奏曲第22番、交響曲41番「ジュピター」、人気のレパートリーということもあって会場はほぼ満員の盛況だったけど、私にとっては「爆睡の友」とも言える鬼門。

 今回の定期でKSTの定期は新年度に入ったわけだが、私は会員席が1階席から2階席に変わったので、まずその音の変化から。2階席にはもう何度も座ったことはあるけど、KSTを2階で聴くのは初めてなので、これでやっとまともな比較が出来ると思うけど、2階(正面)は1階に比べると残響音は控えめで直接音が厚く聞こえる。奏者の技量は2階席の方が見抜きやすいかもしれないけど、音楽を楽しみたいなら1階席後方の方が良いかもしれない。

 さて演奏だけど、全体的に弦楽器が素晴らしかった反面、管楽器の弱さが露呈してしまった印象がある。管楽器の弱さは日本のオケ全体が抱えている問題だけにKSTに限った問題ではないし、KSTの管楽器の水準が日本のオケの水準に達していないと言うことでもない。むしろ弦のアンサンブルの水準が高すぎて、そこに管楽器が入ることでどうしても音の見通しにもやもやが生じてしまうのだ。従ってディベルティメントのような弦楽合奏曲は、きりっと張りつめた音と小気味よいリズムが純粋に楽しめるのに対し、ピアノ協奏曲でホルンの音が秋のオバケのように「どろろ〜ぉん」と入ってくると水準の違いを感じてしまう。

 野島稔の粒立ちの良いピアノの音も素晴らしく、尾高の作為を感じさせない自然な音楽には好感を持ったけど、もっと高い水準を目指せると思う。ラストの「ジュピター」はこのオケにとって2度目の演奏じゃないかと思うけど、モーツァルトの曲の中ではオーケストレーションが厚い曲なので、透明感が乏しくてもきりっとしたリズムとアンサンブルが整えば聴ける曲でもある。そのツボは押さえた演奏で、満場の拍手を集めていた。アンコールはディベルティメントK.137から第2楽章。

 ちなみに写真はカシオのQV-10Aを爆安で買ったのでお遊びに撮影したものです。あんまり写りがきれいじゃないけど、結構、露出が難しくラチチュードが狭い。きっと使いこなせばもっと綺麗に撮れるんじゃないかと思う。今後に期待!



 「デュトワとアルゲリッチ」で、「アルゲリッチはこのところ日本でコンチェルトは久しく弾いていないような気がする。」などと書いたら読者の方からMAILを頂いて、小澤の還暦記念コンサートでピアノを弾いたのでは?とのことでした。ワハハ・・・と笑ってごまかすとしよう! (ご指摘ありがとうございました)