ハレーSQ定期演奏会

(文中の敬称は省略しています)


●1996/09/18 カザルスホールで行われたハレー・ストリング・カルテットの第28回定期演奏会。2nd Vnのメンバーチェンジから2度目の定期だが、あまり大きな方針変更は感じられなかった前回の定期と比べて今回はどうかが気にかかる。

 曲目は前半にベートーヴェンのSQ1番とバーバーのSQ、後半にブラームスのSQ1番という渋めの選曲。全体的な傾向からいうと、漆原啓子の1st Vnが音楽をリードする傾向は、メンバーチェンジ以前と変化していない。1stだから、音楽をリードするのは当たり前なのかもしれないけど、音色的な艶や美しさでも一歩抜きんでている。4人の音の解け合うようなまろやかなトーンとかは年季の入ったカルテットとの差になるのかもしれないけど、それを決して欠点と言い切れないのがハレーの特性だと思う。ただ、2ndが篠崎に変わってから音のぶつかり合いみたいな要素は減少して、パート間のつながりは良くなったような印象もある。これは曲目にもよるのかもしれないけど、前回に比べると明らかに良くなっているんじゃないだろうか。

 ベートーヴェンでは漆原啓子の美しい音が印象的。映画音楽でも有名な「弦楽のためのアダージョ」が含まれるバーバーのSQは、弦楽合奏版があまりにも有名になってしまったので、いささか音が薄いような印象を持ってしまった。音楽としては曲の間のつながりがイマイチで、カルテットのレパートリーになりきれない理由もわかるような気もしたけど・・・。ブラームスはいかにも「ブラームスっ!」という厚めの曲で、ハレーの選曲としては渋め。内向的な燃焼はよく伝わってくるきて、いい演奏だったと思うけど、ここぞという聴かせどころの乏しい曲だけに技術だけでは難しいレパートリーだなぁ・・・とも思ってしまった。

 会場は満員に近い状況だったけど、空席もちらほら。これだけの水準のカルテットでも500人のホールが埋まらないんだから、室内楽を根付かせるそーとー難しいんだなぁ。(1996/09/22)