三舩優子「室内楽の夜」

(文中の敬称は省略しています)


●1996/09/13 カザルスホールで行われた三舩優子のリサイタルシリーズの第2回目、「室内楽の夜」。新進演奏家にとっては、一年間とはいえ5回もの多角的な音楽をコーディネートする機会が得られるけど、やり甲斐のある反面、なかなか大変だ。

 さて、前半は加藤知子の競演でヤナーチェクのヴァイオリンソナタと、上村昇とショパンのチェロ・ソナタ。どちらもピアノの聴かせどころがある選曲である。どちらも個人的には聞き慣れない曲なので「はぁ、こーゆー曲なんですかぁ」という感じで終わってしまったが、加藤知子のVnの音の大きさと、チェロソナタとはいえいかにもショパンらしい曲が印象に残った。

 後半は3人でドヴォルザークのピアノ三重奏曲「ドゥムキー」。これはピアノ三重奏曲のレパートリーからは外せない曲なので、それなりに馴染みがある。しかしいかにも急造のトリオという側面が出てしまったんじゃないだろうか。どうも3人とも向いている方向が違うような感じで、まるで音が解け合わない。室内楽は、年輪がそのまま音楽の熟成度に現れてしまうので仕方がないといえばそうなのだが、これはこれでボジョレー・ヌーボーなりの味わい方をしなければならないのだろう。

 ところで主役・三舩優子、室内楽ではピアノは脇役になってしまうことが多いのだが、やっぱり三舩が主役の演奏会だったという印象は残らなかった。これは悪い意味ではなく、本来の役割に徹していたという意味。やっぱり伴奏でいいピアニストと悪いピアニストを聞き分けるのは難しいので、またの機会に譲りたいけど、室内楽って奥が深いなぁ。(1995/09/15)