サイトウキネンと松本

(文中の敬称は省略しています)


●1996/09/09 松本市には昔から縁があって、何回も行ったことがある。ただ10年位前に行ってからはしばらく遠ざかっていたのだけれど、昨年、今年とサイトウキネンが縁となって松本に行くことが出来た。やっぱり歴史ある城下町らしく、東京がこの10年で遂げた変化と比較すると、松本は時間の流れが止まったような印象を憶える。

 サイトウキネン・フェスティバルの期間中は街頭にはペナントがなびき、商店にはオケの写真と楽器が飾られて、町をあげてこのフェスティバルを成功させようとする雰囲気に満ちている。もしかしたらこの10年の間で、松本市の一番大きな変化は、この「サイトウ記念フェスティバル」だったのかもしれない。まぁ、飲み屋に入って女将にサイトウキネンを見に来た」という話題を切り出しても「えーと、今年の演目は『蝶々夫人』よね?」とか、観光バスのガイドさんが「たしか今年は『白鳥の湖』が上演されるはずです」などと解説しているのを見ると思わず考え込んでしまうのだが、これはご愛敬ということで・・・。

 よく考えて見ると、松本市を会場に選んだというのはなかなか良い判断だったとおもう。この時期の気候は良いし、東京や名古屋はもちろん、大阪からも直通の特急がある。松本空港も全国の主要な空港と接続されていて、「日本のへそ」と呼ばれている地理的条件を見事に生かしているのだ。観光地としても国宝松本城をはじめ、上高地、美ヶ原、安曇野などに日帰りで行ける。蕎麦や馬刺しはもちろん、あんまり知られていないが鰻もうまいし、地酒もなかなか。

 松本という町が好きになったのは、中学生くらいのときに読んだ北杜夫の「どくとるマンボウ青春記」以来で、一度も住んだことはないのにどこか懐かしさを感じさせる町である。また来年も行ければ良いのだが・・・。
 ちなみに来年の曲目は故 武満 徹 氏の遺志により「マタイ受難曲」だというウワサです。