小泉和裕=都響の「シューマン」

(文中の敬称は省略しています)


●97/12/12 本当ならロベルト・アバドがタクトを振るはずだった都響12月の演奏会、しかし肝心の指揮者が「極度の不眠症などによりたいへん深刻な健康状態」におちいりキャンセルとなってしまった。都響は代替の指揮者探しに奔走したらしいけど、なんとか今回の定期は小泉和裕に、17日は矢崎彦太郎、「第九」は井上道義に決めることが出来たらしい。なんとも慌ただしいことだけど、なんとか定期演奏会に間に合わせることが出来た。今日の定期はシューマンをメインとしたもので・・・  個人的にはシューマンとシューベルトは苦手系の作曲家。シューベルト生誕200年という事でさまざまな名演奏が繰り広げられた今年、シューベルト・アレルギーは解消しつつあるけれど、シューマンは依然として苦手系である。今日の宴会は定期会員だから聴きに行ったけど、1回券だったら絶対に聴きに行かないだろう演奏会である。まずシェーンベルグの「浄夜」は残念な出来。まず「浄夜」に求められるべき、透明で研ぎ澄まされた官能的な音色が感じられないし、アンサンブルも充分に整えられていたとは言い難い。「浄夜」は、弦楽5部だけのシンプルなアンサンブルだけに誤魔化しが利かない曲である。序曲代わりに演奏するには、ちょっと難しい曲ではないだろうか。

 あとの2曲は、収録に来ていたNHKによって来年1月に放送される予定の曲である。それだけに前半の「浄夜」よりも演奏内容は充実していた。伊藤恵がソリストとなった「序奏とアレグロ・アパショナート」は、短すぎてあっという間に終わってしまったので感想を述べる立場にはないけれど、シューマンの交響曲第4番は面白い演奏だった。あまり聞き込んだ曲ではないのだけれど、基本的に快速なスピードの演奏で、シューマン嫌いな私にとっては非常に面白い一面を見せてもらったと思う。ちょっとシューマン好きな方には批判があるかもしれないけど、良い面だけ見れば推進力があって表情の密度が濃くなった演奏だったと思う。伊藤恵の協奏曲と、この交響曲第4番をNHKの1時間の放送時間に納めるために演奏スピードを速くした・・・という声もあったけど、本当のところはどうなのだろうか?