今回の「建・TAKERU」の出演、長時間にわたり本当にご苦労さまでした。今回のオペラでは、客席からかなり敏感な反応がありましたけど、ステージ上では如何でしたか?
なんといってもブーイングが寂しかったですね。でも仕方ないでしょう、あんなオペラではね。
今回のオペラに出演された経過は?
私は○○○の発注ですが、電話一本の出演依頼でした。大体そんな感じです。練習期間はどの程度でしたか?
練習は6月から、途中長い夏休みがあって8月後半から再開でした。
かなり長い練習時間ですが、まぁ新作ですからこの位は必要なのでしょうね。團伊玖磨さんは練習に立ち会われましたか?
作曲者は健康上の理由で入院したため、私が知る限り練習には立ち会ったことはないです。でも本当に星出先生でよかった、音楽があれでも、数十倍よくなりました。團さんは全然指揮がだめで、・・・・星出先生は、あんなオペラをよくもここまでにしたなと尊敬しています。
そ、そうですか(^_^;)。確かに、指揮者とオケは大健闘でしたね。今回は作曲家だけでなく演出家もブーイングを浴びましたが、合唱団の中で評判はどうだったのでしょう?
見ての通りだと思います。演出から指示らしい指示はほとんどなかったです。場面別に問題点を挙げてみると、一幕の2場。ヤマト姫から、剣を賜わるときに、「援軍も無く」と建が歌ったあとに新しい兵隊が到着するところ。怪我をしていた兵隊が裏で早変わりしていたのですが、タイミングが悪い。
二幕の宴会から、狩りにいくところでは、側近だけつれていくのになんで兵隊も歩かなくてはならないのか?
建が3幕冒頭で「戦を解く」場面。後ろで合唱は母音発声していますが、建が「戦を解く」といったら、納得しろといわれたけど、音楽的にはその逆をいっている気がしました。星出先生はこのコーラスの意味が分からないとおっしゃっていました。
「最後の合唱は思いっきりしあわせな顔で、」としつこくいってましたね。あの現代人の場面です。合唱団はみんな、「これはハズすな、」っておもっていたと思います。なんで双眼鏡? セコイ演劇でも使わない手ですね。
あの最後の合唱のシーンは、私も双眼鏡でのぞきましたけど、あんまり幸せそうな人はいませんでしたね。私が合唱が関係するシーンで一番問題だと思ったのは、第2幕第一場の草原に火をかけられる草薙のシーンです。これはホームページにも書きましたが、群衆の動きが鈍くてぜんぜん緊迫感がない・・・。
あれは私が演出してもそうはならないと思います。もしかしたら、合唱団のなかには駿河の館で戦って、建が危ないから、走ってきたということを知らない人が多いと思います。きれいに並ぶだけ並んでとしかいわれず、立位置だけを気にした演出ですから、しかたない。舞台上は演技も出来ない状態でしたね。
その他で、問題を感じた点は?
見ている方には関係がないかもしれませんが、ギャラの問題で新国立劇場に対する不信感が広がりました。ソリストに関してはあくまでもウワサですが・・・ソリストの発注が二期会と日本オペラ協会の2つの団体に発注されたのですが、ギャランテイが天と地ほどの差があり、日本オペラ協会だときちんと支給されたという話ですが、二期会の場合、交通費と稽古はノーギャラであったと聞いています。これは噂です。
合唱は東京混成合唱団と日本オペラ協会の発注でしたが、はじめ日本オペラが東混の下請けで、ギャラに差があるという噂がながれ、各々の団体のエキストラの方は団員よりも安いギャラあったことが判明しました。やる気を無くさせたことでしょう。
ギャラは、新国立劇場から直接、出演者にではなく、出演者には各発注元から支払われたのですよね。想像すると、新国立劇場は、東混と日本オペラに委託した総額しかわかっていないのではないですか。たぶん新国劇は各個人にいくら支払われていたかは解っていない。そうだとすると、委託してしまったことに派生する問題ですね。
その通りだと思います。ギャラの格差は、ソリストは顕著に現われていると思います。○○○も助演の方のギャランティは低かったそうです。合唱団も私の所属する団体で練習1枠あらり数百円の格差、本番などになると2千円ほど違ったように思います。
この辺は自前の合唱団が出来れば解決する問題だと思うのですが、新国立劇場は来年から専属の合唱団を発足させる予定で、すでに選考も終了している・・・と聞いていますけれど、この点でなにか問題などを聞いていませんでしょうか?
選考は終了しています。二期会からの方が多いようで、40人が決まったそうです。二期会合唱団はソリストが挨拶に来ないと大変だったりする合唱団らしく、オペラの合唱団の位置が高いので、その方たちの何人かが新国の合唱にはいったということはいいことかも知れません。これからいろいろあると思います。
ステージの裏側はいかがでしたか? 私たちリスナーがなかなか立ち入れないところですけれど。
そうですね、楽屋口のこと。入る時にパスポートが必要なのは同じなのですが、バーコードが入っていて、各ホールの入口は、すべてオートロックになっています。あまり意味が無いような・・・ステージのマネージャーさんは、舞台を作る上でとても重要だと思いますが・・・
楽屋は奇麗です。シャワーも沢山ありますが、アイーダの時にはそれでもたらなくなるでしょう。ソリストの部屋はベットのないワンルームマンションの作りです。
しかし食堂がマズイ!! 最悪です。古々米を使っているのかと思うほどの米、たぶんそうでしょう。まずいオカズ、最悪です。こういう所は税金を使ってほしい。いい歌が歌えませんね。この楽屋食堂は「社員食堂」であって、出演者が休憩に入って食事にいくと、閉まっているのです。昼と夜しかやっていない、ですから歌っている間に営業していて、休憩のときに閉まっている食堂なのです。ですから2度しか食べていません。
あとステージのマネージャーの経験不足が著しい!
特に問題になったのが食事の件です。舟士の役のひとなど、ボディーペインティングしていて外に出られないので食事を出してほしいといったときに、はじめ出前を取れという話しになりました。100人の合唱団がそれぞれに出前をとったらどうなるか、簡単に分かりそうなものです。楽屋口も監視が厳しいのでとても入れないのだし、結局、お弁当が出たのですが、それは文句をいった次の日だけで、それからは無しでした。そして、女性には出番が少ないという理由で、一度も出なかったのです。公演が終わって一言!
合唱の内部も、もう荒れていましたよ。とくに経験のあるひとは喧嘩っぽかったですね。
せっかくこれだけの劇場が出来たのですから、意見をいいあって、活性化させていきましょう。みんなでいいオペラホールにしたいのですから。