ベルリン国立歌劇場「パルジファル」

(文中の敬称は省略しています)


●97/11/16 ワーグナー最後のオペラ「パルジファル」の演奏会形式による上演。有名な割には日本では極めて上演回数が少ないオペラで、私自身もマトモにこのオペラに向き合うのは初めてである。NHKホールで午後1次に始まった演奏会が終わったのは、午後6時。正味5時間の及ぶ宗教儀式的作品を演奏会形式で耐えられる人間は、真性ワグネリアンの試金石だろうと思う。

 この日の登場した歌手は、本場バイロイト級の名歌手が揃えられたらしいけど・・・以下の通り。

 ほとんど聞き込んだ経験のない私にどうのこうの言いにくい演目だけど、演奏内容としては素晴らしいといって間違いないものだったろう。まず管弦楽について。PAを使っていたのかどうかは判別できなかったけど、普段は1500人程度の歌劇場で演奏しているとは思えないオーケストラだ。私は3階最後列だったけど、音量的にはほとんど問題を感じなかったし、厳格で霊験的な雰囲気溢れる音色はたぶんパルジファルならではの音楽だろう。前回の来日とうってかわって、バレンボエムにきちんとコントロールされたオーケストラは、かつてのレヴェルと取り戻しつつある。

 歌手も素晴らしい。個々の歌手についてどうのこうの言うレヴェルを超えて、どの歌手も素晴らしい。あのNHKホールでこれだけの声を響かせるのだから。これだけのレヴェルの歌手を揃えた「パルジファル」を聴くことは、もう当分出来ないだろうと思う。ただ当日の11時に急遽代役に抜擢されたタイトルロール、アナセンは頑張ったけど、やや雰囲気が違う。彼自身はワーグナーの経験はそれなりに豊富で、トリノでインバル指揮の「ジークフリート」でタイトルロールを歌うらしいけど、ワーグナー的なヘルデン・テノールというよりはリリック・テノール的な声の持ち主。豪華キャストの中でやや分が悪かったけれど、全体の水準は高かった。

 まぁ、演奏内容は圧倒的な水準だったと言って良い。し、しかし長いオペラだ。あの狭いNHKホールの座席に押し込められて、聞き慣れない宗教儀式につき合わうのは並大抵の事ではない。私は真性ワグネリアンには・・・・なれそうもない。