さて、その演奏だけど、フルネ=都響はさすがに相性が良い。音色の豊かさ、オケの反応の良さは、他の指揮者と比べて明らかに水準が違う。フルネとしてはやや鳴らした演奏だったと思うけれど、過度な演出効果は避けて、決して品位を失わない演奏だった。空席が多かったこともあって、ホールが良く響く。東京文化会館は空席だと残響が2秒ということなので、かなりそれに近い豊かな響きだった。オケの機能性ゆえの問題もあったけれど、基本的には満足できる水準。
ただしソリストにはちょっと不満。小林一男(ファウスト)が不調で、精一杯頑張っているのは解るけれど、高音域で伸びないし苦しさを感じる。寺谷千枝子(マルガリータ)のウエットな声も、個人的にはあまり好きな系統ではない。稲垣俊也(メフィストフェレス)は「建・TAKERU」に続いて抜群の存在感を感じさせたけど、威厳が表面に出てしまって狡猾さが後退してしまった感じ。まぁ、これは好みの問題だと思う。あと晋友会合唱団も頑張ったけど、やっぱりフランス語の語感がカタカナっぽくで聞こえるのは残念。これは歌手にも共通する問題だけど、イタリア語やドイツ語はかなりそれらしく聞こえるのに、フランス語はやっぱり難しいんだろうな。その点をのぞけば、高水準の「ファウストの豪罰」だった。