シャローン=都響「R・シュトラウス」

(文中の敬称は省略しています)


●97/10/19 都響が東京芸術劇場で行っている「作曲家の肖像」シリーズ、今回のテーマは「R・シュトラウス」である。シャローンの指揮による「ドン・ファン」、オーボエ協奏曲(Ob:本間正史)、「英雄の生涯」の3曲で、ホールも7割程度は埋まったけれど、先日の定期演奏会と同じくどうもパッとしないコンサートだった。

 「ドン・ファン」と「英雄の生涯」の共通する問題だけど、R・シュトラウス特有の音色に乏しく、オケ全体のリズムが重たい。特に「ドン・ファン」は、全体に荒さが目立って、拍手も小さめ。「英雄の生涯」も、前半はまぁまぁだったけど第5部「英雄の業績」以降は退屈な演奏だった。正直言って、記憶に残らないタイプの演奏だったけれど、「英雄の生涯」のソロ・ヴァイオリンを担当した矢部達哉は入団当初に比べてかなり良くなったと思う。朝の連続テレビ小説「あぐり」のテーマ曲を弾いたり、5月にはソプラノの澤畑恵美と結婚したことがスポーツ新聞にも掲載された人気のヴァイオリニストだけれど、入団した当初は音量に乏しくコンサートマスターとしてはちょっと頼りなげだった。しかしこの日のソロを聴く限りでは、音量も十分だし、英雄の伴侶としての艶も申し分なく、堂々たるコンマスぶり。また2曲目に演奏したオーボエ協奏曲で独奏を担当した首席奏者の本間正史も、とても美しい音で聴き手を魅了した。

 都響は最も長く聞いているオケだけど、ホントに指揮者次第のオケだ。機能性そのものは東京でも上位だと思うけれど、自発性の水準はイマイチ。指揮者に欠点があってもカバーできないことが多い。その意味では指揮者の力量を、非常に正確に表現してしまうオーケストラだと思う。

 


●以下余談として音楽情報。17日の東京新聞夕刊にキーロフ劇場音楽監督のワレリー・ゲルギエフがMETの首席客演指揮者に就任し、今後5年間に8つの演目を指揮するとの記事が掲載された。ゲルギエフはキーロフ歌劇場とともに来日し、その凄まじい実力を遺憾なく発揮した指揮者として記憶に新しい。指揮者としての力量では、レヴァインとは比較にならないほど素晴らしい。レヴァインのもとでちっとも進歩しないMETのオケや合唱団をいかに鍛え上げるかが見所だ。

●ヘネシー・オペラとして続けられてきた小澤=NJPによるオペラ・シリーズの来年5月の演目はドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」。テレサ・ストラータス。クロフト、ホセ・ヴァン・ダムなど名歌手が登場するけれど、事情通によれば、このシリーズは「ペレアスとメリザンド」で打ち止めになるらしい。残念と思う人もいると思うけれど、一般発売は11月14日。値段は25,000円〜9,000円。問い合わせは新日本フィルへ。

●毎年、格安のオーケストラ・コンサートを行っている都民芸術フェスティバル。在京9つのオケが3,500円〜1,500円で聴くことが出来る。N響の日は早々に売り切れるので、チケット入手はお早めに。発売は11月4日(火)