シャローン=都響A定期

(文中の敬称は省略しています)


●97/10/14 イスラエルの指揮者デイビット・シャローンが登場する都響の文化会館定期。だけど、会場は空席が目立ち、3階以上のサイドの席はガラガラ、全体でも6割程度の入りだったと思う。曲目はすべて20世紀の作品で・・・  バーンスタインの曲は大編成でとても楽しい作品だけど、荒さが目立つ演奏で練習不足はあきらか。メインの「春の祭典」はそれなりの練習量を確保したと見えて、荒さは無くなったけれど、この曲に必要とされる強烈なリズム感や色彩感は物足りない。足取りが重たい「春の祭典」だった。この曲の演奏中に「ぼけーっ」とする事は少ないのだけれど、こんな演奏なものだから集中力を欠如してしまった。

 しかしバーバーのヴァイオリン協奏曲は、オケもなかなか引き締まった演奏を聴かせてくれたし、さらに特筆すべきはパメラ・フランクの独奏である。彼女のヴァイオリンはこれまで何回か聴いたことがあるけれど、知性と情熱が極めて高い次元で共存したヴァイオリニストだなぁ・・・と思った。昨年のシューベルトのVnソナタで聴かせた静けさの中に隠された情熱、先日のパブロ・カザルス・メモリアル・コンサートで聴かせた情熱の中に隠された知性。彼女の「情熱」と「知性」との配合を、その曲に合わせて過不足なく音にして表してしまう。私は英語は大の苦手なので彼女と話をするのは不可能だとは思うけれど、彼女と話をしたらきっと明晰な頭脳と鋭敏な感性にビックリするのではないかと思う。

 バーバーのヴァイオリン協奏曲は私も初めて聴く曲。彼女自身が望んだ選曲で、美しい旋律が現れるけれど、焦点が絞りにくく、下手をすればとりとめのない演奏に陥りやすそう。あまり好きなタイプの曲ではないけれど、パメラ・フランクは楽想に応じた表情を的確に表現しているように思える。安定した音楽を聴かせるのに十分すぎるテクニック、決して虚仮威しになるようなことはない。音量も豊かだし、引き締まった艶のある音が美しい。オケのサポートも敏感で、この日のコンサートの唯一の収穫だった。