小泉=都響の武満徹作品集

(文中の敬称は省略しています)


●97/09/22 武満徹は、たぶん世界で一番有名な日本人作曲家だろうと思う。世界のメジャーなオケの委嘱・初演された作品も多いし、晩年はオペラの構想も進め、現在来日中のリヨン国立歌劇場で上演されるはずだった。その武満がこの世を去ってから1年半ほど経って、都響定期演奏会でオール武満プログラムが組まれた。この手のプログラムにしては珍しくチケットはSOLD OUTとなって、当日券売場にはキャンセル待ちの列が並んだのは、ひとえに武満の業績に対する評価だろうと思う。

 しかし、私は・・・現時点で武満の音楽の多くが理解できない。先日のデュトワ=N響で効いた「family tree」は別だけど、その他で良いと思った曲が思い浮かばないのである。武満の曲には、筆致の細い線画にようなイメージがある。ほの暗くシアン系の淡い色彩感が感じられるけど、決して華美ではない。その筆致に綴られた心象風景のような音楽は、独自のタケミツ・トーンと呼ばれる世界を構築しているのは解るのだけれど、明確なリズムとかメロディーに乏しく聴き終わって耳に残るものがないのである。どれがどの曲だっけと・・・と思い起こそうとしても、難しいのである。

 プログラムは、武満の出世作「弦楽のためのレクイエム」と、代表作「ノヴェンバー・ステップス」、休憩をはさんで「夢窓」、独奏ヴァイオリン矢部達哉で「遠い呼び声の彼方へ」、最後の純管弦楽作品「精霊の庭」の5曲。私個人としては、「弦楽のためのレクイエム」は武満トーンの萌芽は感じるけど、決してそれ以上の曲だとは思えない。尺八と琵琶を独奏に使った「ノヴェンバー・ステップス」も実験作以上ではないと思う。どちらかというと後半の曲の方が完成度が高いと思うけど、・・・・どうも私の波長と合わない。曲を聴いているうちに神経が疲れてきて、集中力が欠如してしまう。こんな感じだから、小泉=都響の演奏についても良かったとか悪かったとかの感想もない。

 私自身の感性も変わって、いずれは良い曲だったなぁ・・・と思える日が来るのかもしれないけど、現時点で武満はちょっと苦手系。現代音楽そのものを聴くのは嫌いじゃないんだけどね・・・。