尾高忠明=紀尾井シンフォニエッタ東京

(文中の敬称は省略しています)


●97/09/19 尾高忠明指揮KSTの第11回定期演奏会。本来は「第2日目」の定期会員なのだけれど、今回はリヨン歌劇場の「カルメン」とぶつかってしまったため「第1日目」に振り替えしてもらった。振り替えしてもらう段階で残っていた座席が1回最後列の一番左側だけ、完全に2階席のバルコニーの下に隠れてしまう。一般的に「雨宿り席」といって音が悪くなりがちな座席である。実際に座ってみると・・・・やっぱり音がいつもと違って冴えない。いつもの2階正面席と比較すると、音の距離感を感じるし、フィルター越しに音を聴いているようなもどかしさを感じる。そんな訳だから、あまり楽しめるコンサートにはならなかった。曲目は・・・  今年はシューベルトの生誕200年、ブラームスの没後100年、メンデルスゾーン没後150年に当たる年である。この3人の曲を通して、ロマン派の音楽を楽しもうというのが今宵のプログラムである。しかし座席の音響的条件より体調万全とはいかずに第1曲目はほぼ完全に爆睡! おかげで次の二重協奏曲はスッキリと聴くことが出来た。この協奏曲はいつも大ホールで聴いているので、室内オケのレパートリーとして登場するとちょっと新鮮な感じ。独奏はオケのメンバーでもある景山と河野がつとめたのだけれど、ちょっと景山のVnが線が細く、ヴィブラートが大きすぎて、河野やオケの音と噛み合わない。どうも浮き上がっているのだ。さらに全体的にブラームスらしい色合いが出てこなくて、ちょっと不満な演奏だった。もともとあまり好きな曲ではないのも原因かもしれない。

 ラストはメンデルスゾーンの「イタリア」。弦が優秀なKSTにとって、最も適した曲だろうと思う。キラキラした密度感がある弦楽器は、KSTならではのもの。でも・・・・座席が原因なのか、どうも全体的に冴えない。いや座席だけじゃなくて、オケ全体にKSTがデビューした時のような鮮烈な切れ味が後退しているような気がする。客席にもちょっと空席が目立つようになってきたし、ここらあたりでもう一度奮起した演奏を聴かせてもらいたいなぁ。