ヴィオッティ=日本フィル

(文中の敬称は省略しています)


●97/09/12 宿酔いで調子ワルイなかを20世紀音楽を聴くのはちょっと辛いものがあったけど、日本フィル「20世紀の作曲家シリーズ」第7回目の演奏会を聴きに行ってきた。指揮はマルチェッロ・ヴィオッティ、肩書きは「ウィーン国立歌劇場客演常任指揮者」「ザールブリュッケン放送響首席指揮者」とある。初めて聴く指揮者だけど、肩書きからずるとヨーロッパの中堅指揮者という位置づけだろうか。6月の広上の時には9割近く入ったのに、今日の客席は約半分程度の入り。この差はやっぱり指揮者の知名度の差なのだろうか? 今日の曲目は  ヴィオッティの指揮は、どこかインバルに似ている。出てくる音の緊張度はインバルほどではないけれど、ヴィオッティの方のが癖が少ないので好き嫌いは少ない指揮者だろうと思う。今回はステージサイドの席で聴いたのだけれど、指揮台上での集中力の高さ、明晰なタクトは、有能な指揮者であることをうかがわせる。日フィルもヴィオッティのタクトに良く反応して、最初の曲から良い演奏に仕上がった。

 最初のリジツカは、ベルリン放送響やハンブルグ歌劇場の総裁を歴任する一方で、前衛的作曲家としても活動をしているとのこと。今回の「タリス」という曲は、16世紀イギリスの作曲家トーマス・タリスのモテット「御身よりほかにわれは望みなし」を引用した作品だ。研ぎ澄まされたオケの重層的な響きの中から、件のモテットが少しづつ姿を現して、全体の響きの中に融合していくのだけれど、楽器の音そのものの美しさとテンションの高さが問われる作品だ。指揮台上の譜面は、高さ80センチはあろうかという巨大なものだけど、これはヴィオッティの美点が良く現れた演奏で、日フィルも研ぎ澄まされた音で応えた。

 次のレスピーギの曲は、最初の曲で集中力を使いすぎた反動で完全爆睡モードに突入! 睡眠学習モードで聴いた感じではあまり面白そうな曲ではなかった・・ZZzzz....

 休憩後のオケ・コンは、私が聴いた同曲の演奏の中ではベストのものだった。日フィルは超高機能を誇るオケではないと思うけれど、アンサンブルと集中力が整えば素晴らしい演奏に仕上がることが多い。この日のオケ・コンは、ヴィオッティの集中力と、日フィルのアンサンブルが高い次元で調和した演奏に仕上がった。ヴィオッティは奇をてらわない正攻法の解釈なので、聴いていて安心感がある。ほの暗い感じの弦楽器の音とリズムが、バルトークの世界を作り上げていく姿はなかなか感動的。これならば定期演奏会の「愛の妙薬」も素晴らしい演奏に仕上がりそうだ。ちょっと値段が高いのが玉にキズだけど・・・・。