秋山=東響の「トゥーランガリラ交響曲」

(文中の敬称は省略しています)


●97/08/27 オリヴィエ・メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」は、20世紀音楽の中でも最高傑作に数えられる名作である。その編成の特殊性、巨大さゆえ、決して演奏回数が多い作品とは言えないけど、東京では昨年6月のケーニック=都響定期に次ぐ演奏会である。この手の作品が、年に一回も上演されるのは、それだけリスナーの人気のある交響曲ということだろうし、事実、サントリーホールは満員になった。演奏は現代作品に定評がある秋山和慶指揮東京交響楽団、ピアノは木村かをり、オンド・マルトノは原田節(たかし)。

 「トゥーランガリラ」はサンスクリット語で「愛の歌(運動・時間)」という意味。そのタイトルの通り官能的な音楽が複雑に交錯し、メシアンならではの「愛の時間」に満たされる。秋山のアプローチは、ピアニッシモを磨き上げると言うよりも、フォルテを拡大したもの。個人的には室内楽的に磨き込まれた演奏の方が好みだけど、この日の東響の演奏を聴く限りは悪くない。アンサンブルでは向上の余地はあるけれど、オケのやる気が全面に出て、充実した響きを作り上げていた。少なくとも昨年のケーニック=都響の演奏よりも上だと思う。わずか2,000円のチケットで、この内容なら充分に満足すべき水準だろう。

 この曲の演奏に欠かせないオンド・マルトノは、見たことのない人には説明のしにくい楽器だけど、宇宙人が登場するときの効果音みたいな「ひゅいーん」という音がする電子楽器である。この曲がこれほどまで演奏回数が増えたのも原田節というオンド・マルトノ奏者がいたためらしいけど、これは面白い楽器だ。ちょっとキワモノ系かもしれないけど、他の楽器では表現できない音楽があるかもしれない。機会があったら一度リサイタルを聞いてみたい。