「トゥーランガリラ」はサンスクリット語で「愛の歌(運動・時間)」という意味。そのタイトルの通り官能的な音楽が複雑に交錯し、メシアンならではの「愛の時間」に満たされる。秋山のアプローチは、ピアニッシモを磨き上げると言うよりも、フォルテを拡大したもの。個人的には室内楽的に磨き込まれた演奏の方が好みだけど、この日の東響の演奏を聴く限りは悪くない。アンサンブルでは向上の余地はあるけれど、オケのやる気が全面に出て、充実した響きを作り上げていた。少なくとも昨年のケーニック=都響の演奏よりも上だと思う。わずか2,000円のチケットで、この内容なら充分に満足すべき水準だろう。
この曲の演奏に欠かせないオンド・マルトノは、見たことのない人には説明のしにくい楽器だけど、宇宙人が登場するときの効果音みたいな「ひゅいーん」という音がする電子楽器である。この曲がこれほどまで演奏回数が増えたのも原田節というオンド・マルトノ奏者がいたためらしいけど、これは面白い楽器だ。ちょっとキワモノ系かもしれないけど、他の楽器では表現できない音楽があるかもしれない。機会があったら一度リサイタルを聞いてみたい。