シモーネ・ヤング=NHK交響楽団

(文中の敬称は省略しています)


●97/07/31 今年の「N響・夏」のコンサートは「ドイツ ロマンの森の音楽」とのテーマで、モーツァルトからR・シュトラウスの音楽までを紹介するプログラム。指揮者にはウィーン国立歌劇場を中心に活躍している若手女性指揮者シモーネ・ヤングが日本の指揮台に初めて登場した。音楽界では女性の進出が著しいけど、指揮者に限っては女性の進出はまだまだ少ない。「指揮者は男の仕事」みたいなイメージがつきまとうし、メジャーになった女性指揮者はまだ存在しない。ヤングは出産を経験して、かなり太めになったみたいだけど(^_^;)、トレードマークのポニーテールをなびかせて指揮台に登る姿は新鮮なものを感じる。各地での活躍のウワサを聞くと、メジャーな指揮者に1番近い女性指揮者というイメージがあるけれど、果たしてその実力はどうなのか、ナマで聴くのは初めてなだけに貴重な機会である。

 前半はウェーバー「魔弾の射手」序曲とモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(Vn:堀正文)。彼女のタクトは、器用な感じはしないけれど、とても丁寧な音楽の進め方をする。その慎重さが音楽の流れを途切れさせてしまったり、ダイナミックレンジを狭くしてしまうところも感じたけど、前半のプログラムを聞く限りは、どこにでもいる普通の指揮者の範疇だろう。モーツァルトのヴァイオリンを弾いた堀正文は、音は綺麗だけど、音色の変化に乏しく速いパッセージは弾き飛ばしている感じで、印象悪し。手抜きしているようにしか見えない。

 後半はブラームスの「悲劇的序曲」「大学祝典序曲」と、R・シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」。前半よりは指揮とオケの呼吸が合ってきた感じで、特に「ティル」はきちんと練習の成果が見えた演奏だったと思う。しかしこの日の演奏を聴く限りでは、前評判ほどの内容を聞き取ることは出来なかった。これはオケの反応の悪さに原因があるのか、指揮者の力量によるものなのか解らないけど、お互いが手探りで音楽をつくっているようなもどかしさを感じてしまった。アンコールはブラームスの「ハンガリー舞曲」から。

 会場は、スポンサーの招待が多く満員になったけど、子供連れやガサゴソ音を立てる客が多くて、音楽に集中できないこともしばしば。まぁ、携帯が鳴らなかったのが救いかな(^_^;)。