清水和音の解釈はきわめて正統的なもので、ハッタリめいた部分はまったく感じさせない。音も美しい上に粒立ちがよい。耳障りになる音も聞こえてこないのはさすがだと思う。ただ、清水和音のピアノで4曲のソナタを一夜に聴くのも、ちょっと辛いように感じたのも事実で、彼のピアノ・音楽には意外性が乏しいのである。ダイナミックレンジの広さやスケール感もそれなりに感じさせるのだけれど、計算のあとが見えてしまう感じがする。その計算式を先読みしていくと、・・・・意外性に乏しくスケールを小さく見せてしまう感じがするんじゃないだろうか。
決して悪い演奏ではないのだけど、私の波長にはちょっと合わない感じがした。終演後はブラボーの声も飛んでいたけれど、これだけのチクルスの最終回にしては拍手が小さめでクールな反応だった。