エーテボリ交響楽団のシベリウス

(文中の敬称は省略しています)


●97/07/08 サントリーホールのPブロックに座ることは滅多にない。どう考えても音のバランスは悪いし、聞こえない楽器もある。しかし、ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団の「シベリウス・プログラム」は、そのような悪条件であっても素晴らしさが伝わってくる白熱の演奏会だった。

 Pブロックに座る場合は、管弦楽の善し悪しには言及しないことにしているので、その点についてはあんまり書かないけど、やっぱり北欧のオーケストラだなぁという実感を強く持った。シベリウスはフィンランド生まれ、このオケはスウェーデン、この二つの国の政治や経済、文化などがどのように異なるのか全く不案内なのだけれど、音楽の上では共通の言語があるようにも思える。特に後半に演奏したシベリウスの交響曲第2番は、素晴らしかった。ヤルヴィは、第2楽章の途中でタクトを譜面台にぶつけ、真っ二つに折ってしまう「事件」が発生したけど、そんなことは全く意に介さない。割り箸程度の長さになったタクトを握り続ける姿はちょっと滑稽だったけど(^_^;)、その姿は真剣そのもの。器用なタクトには見えなかったけど、心からシベリウスに共感しているのが視覚的にも伝わってくる。もちろん音楽としても、濃密に具現化されていたのは言うまでもない。アンコールはステンハンマーの「歌」から”メランコリック・カンタータ”と、シベリウス「カレリア組曲」から”行進曲風に”の2曲。オーケストラが引き上げても鳴りやまぬ拍手に、ヤルヴィがステージに連れ戻される一幕もあった。

 前半は「フィンランディア」とヴァイオリン協奏曲。ソリストのワディム・レーピンは素晴らしい技巧の持ち主だけどそれが優先し、音楽表現としては一本調子で未熟に感じるところが多かった。今日の演奏でもところどころで「そんなに速く弾き飛ばさなくても良いのに・・・」と思うこともあったけど、かつてほどではない。むしろじっくり聴かせるところは丁寧に弾き廻し、音色ともに密度の高い演奏に仕上げていた。アンコールには先日の都響と同じジュナンの「ヴェニスの謝肉祭」を演奏、Pブロックから見た指使いは神業としか言いようがない。