ロバート・スパーノ=新日本フィル

(文中の敬称は省略しています)


●97/07/04 新日本フィルのオーチャードホール定期で、指揮はロバート・スパーノ、ボストン交響楽団で副指揮者を経験し、現在はブルックリン・フィルの音楽監督を務める若手指揮者。新日本フィルは7月の定期演奏会をもって、フランチャイズを「すみだトリフォニーホール」に移すことが決まっている。オーチャードホール定期はそのままだけど、東京文化会館は今月の定期で最後となるので、記念に文化会館への振り替えも考えたのだけど、夏の文化会館は冷房がほとんど効かないのでメチャクチャに暑い! この前の「ラ・ファヴォリータ」もサウナ風呂状態で、実に3時間半も我慢したのだけど、これが東京文化会館の一番嫌いなところなのである。と、言うわけで、今月はオーチャードホールへ行ったんだけど、渋谷の雑踏がメチャ混んでいて蒸し暑さ倍増! あー、どこ行っても暑い!(-_-;)

 プログラムはNJPとしては珍しい超名曲プログラムでチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲とマーラーの交響曲第1番「巨人」というもの。チャイ・コンのソリストはフランク・ペーター・ツィンマーマンで、ナマで聴くのは初めてのヴァイオリニスト。素晴らしいテクニックの持ち主で、何気なく弾いているように見えるけどppでも音が全く揺るがない安定感が魅力。この間聴いたレーピンも凄かったけど、彼の表現はジャケットの写真からも推測できるように「わんぱく坊主」的なところがある。「どーだ、俺のテクニックはこんなに凄いんだぞっ!」って言わんばかりのアンコールを必ず弾いてくれるけど、その点、F・P・ツィンマーマンはオトナだ(^_^;)。基本的には表情はあまり盛り込まないでドライに弾いていくのだけど、ところどころでテンポを変えて思いっきりタメを入れる。チャイ・コンとしてはかなり変わった表現だ。そのため第1楽章の最後ではオケとズレまくってヒヤヒヤしたけど、昨日の東京文化会館定期でも同じことをやったのだろうか? 良かったのか悪かったのかよく解らない演奏だったけど、F・P・ツィンマーマンはまた聴いてみたい。

 後半は「巨人」。いつも冒頭の導入部で演奏の善し悪しをある程度判断してしまうのだけど、、朝霧を思わせる弦楽器の音からしてちょっと大きめで、最後まで磨き込まれたppは聴けなかった。ダイナミックでオケを大きく鳴らした演奏で、NJPもそれなりに健闘はしていたけど、全体として陰影感のない演奏で奥行きには乏しい。マーラー独自の屈折した感じは、どこかに吹っ飛んでしまった。最後のコーダは曲そのものの力でそれなりに興奮した感じはもたらされるけど、音が大きいだけで全体には退屈な演奏だったなぁ。

 さて、この日の弦楽器の配置はちょっと変わっていて、レニングラード・フィルの配置に近い。すなわち、左から1stVn、Vc、その後ろにDb、Va、2ndVnというもの。実は先月から配置を変えたらしいのだけど、私はMETに行ったので、今月が初めてだった。左からコントラバスが聞こえてくるのはちょっと違和感があるけど、これはすみだトリフォニーホールの音響にあわせたもので、今後のNJPはこの配置で演奏するとのことである。またこの日のコンマスには、ゲストとして豊嶋泰嗣が座っていたけど、この秋から再び首席コンマスとして復帰するとのこと。この秋からの定期演奏会に注目したい。