ます素晴らしかったのはフェルナンドを歌ったジュゼッペ・サッバティーニ。絞り出すような声の出し方に好みは分かれるかもしれないけど、テンションが高くて輝かしい声はとても魅力的。表現力も申し分なく、一昨年の「ファウスト」の時を遙かに上回る出来映えで、この舞台の成功の支えていた。レオノーラを歌ったペンテェーヴァは、はじめは語り口がたどたどしく不安な滑り出しだったけど、第4幕は迫真の演技と歌を見せた。アンフォンソ11世のロベルト・フロンターリ、バルダッサーレ(フェルナンドの父親)のボナルド・ジャイオッティも素晴らしく、男声陣には全く不満を感じなかった。
マルコ・ボエーミ指揮の東京フィルハーモニー交響楽団も安定したサポートを聴かせてくれたし、火災で焼失したイタリアのフェニーチェ座から借りた舞台装置や衣装も重厚かつ豪華で素晴らしい。世界的にみても滅多に上演されない演目だけど、これだけ高水準の舞台が演じられるとは思わなかった。しかし演目そのものの問題として、ヒロインが何故メゾ・ソプラノなのか?という疑問もあるし、アリアなど音楽的な内容では今一つ魅力に乏しい感じがするのも事実。まぁ、一度聴いただけで魅力をどーのこーの言うのもなんだけど、あんまりCDを買って聴きたいと思うような感想は持たなかった。やっぱりドニゼッティだと「愛の妙薬」が一番好きだなぁ。