ヤルヴィ=エーテボリ交響楽団

(文中の敬称は省略しています)


●97/06/28 エーテボリ交響楽団は、スウェーデン第二の都市エーテボリのオーケストラで、1905年創立だからかなりの歴史を持っていることになる。しかし楽壇の注目を集めるようになったのは82年にネーメ・ヤルヴィが首席指揮者に就任してからだろうと思う。BISやグラモフォンに北欧音楽を積極的に録音を行い、優れたアンサンブルを披露した。来日公演は3回目らしいけど、私はナマで聴くのは初めて。

 最初はエストニア出身の作曲家トゥビンのバレエ音楽「クラット」組曲。一度聴いた限りではあまり魅力的な曲だという認識は持てなかったけど、いかにも北欧の音楽というイメージ。一方、オーケストラは実に良くコントロールされているのがわかる。少しくすんだ感じの弦楽器を基調にした個性的なトーンが魅力的だ。

 続いて横山幸雄をソリストに迎えて、グリークのピアノ・コンチェルト。横山のピアノの音は、音そのものはとても美しく、歌い廻しも叙情的でロマンチックなので、グリークのコンチェルトには好適。オケのサポートも実にしっかりしたもので、北欧の音色そのままに、グリークの叙情的な世界を見せてくれた。ただソリストに関しては、確かに音がきれいなんだけど、音色のパレットやオケを突き抜けてくるような密度・音量は今一つ、それだけがちょっと気になった。

 休憩後はベルリオーズの「幻想」。音色は前半の北欧的な雰囲気から、現代的な音に変貌。オケの実力を計るのにこの上ない曲だけど、アンサンブルの精度はかなりのものである。ホルンに問題は感じたけど、それ以外はヨーロッパの一流オケに数えても全く遜色がないと思う。ヤルヴィの解釈は表題性を重視したものだけど、インバルやミュンフンなどと比べると、デフォルメはほどほどに抑えた感じ。第4楽章「断頭台への行進」以降、アヘンを飲んだ幻想は強烈なバスドラムの音が印象的。曲全体の構造がしっかりしていて、重心が低いので、安心して音楽に身を浸せるのが良い。

 アンコールはシベリウスの「アンダンテ・セスティーヴォ」とカレリア組曲から「マーチ」の2曲。この演奏こそ、まさに「水を得た魚」。7月8日のシベリウス・プログラムが楽しみ。