トルトゥルエ=都響のプーランク

(文中の敬称は省略しています)


●97/06/08 都響が芸術劇場で開催している「作曲家の肖像シリーズ」、その今回のテーマはフランスの作曲家プーランク。知名度ではイマイチの作曲家のためだろうか、日曜日のマチネだというのに空席が目立ち、7割以下の入りだろうと思う。

 今回の指揮者は高名なチェリストの子息で、フランス生まれのヤン=パスカル・トルトゥリエ。イギリスを中心に活動していて、都響には初客演となる。曲目はバレエ組曲「牝鹿」、「2台のピアノとオーケストラのための協奏曲」、休憩をはさんで「シンフニエッタ」というもの。全部初めて聴く曲だけど、陽性で軽妙、フランスのエスプリに溢れ、耳に馴染みやすい曲ばかり。絵で言うとシャガールの絵を見ているような感じだ。ただしドイツ系の音楽とは対照的に、思索的とか内証的とかいう評価とは全く無縁で、音楽としての奥行きは乏しい感じがする。

 この日の都響はとても良い演奏だったと思う。いつもの硬質で密度の高い弦楽器の音が一変して、しなやかで軽妙な音が溢れ出てくる。トランペットの音まであか抜けているのには驚いたけど、ホルンの音だけはいつもの都響だった(^_^;)。指揮者のリズム感も良く、フランス的な色彩感に溢れ、聴いていてとても気持ちの良い音楽だった。2台のピアノのソリストは花房晴美&真美の姉妹が登場したけど、これも息があった演奏を聴かせてくれた。

 トルトゥリエは自然な音楽の流れを作り出すのが旨い指揮者だ。オケを締め付けているという印象はないのだけど、出てくる音楽のアンサンブルを聴いているとオケを旨くコントロールしているのがわかる。13日はMETの「ファウストの劫罰」を聴きに行くので都響A定期は聴けないのが残念だけど、、B定期は楽しみだ。