インバル=都響のベートーヴェン

(文中の敬称は省略しています)


●97/05/22 インバル=都響の今年の最終公演は、作曲家の肖像シリーズのベートーヴェン特集で、東京芸術劇場はほぼ満員になった。インバルが古典系の曲を振った例は、初めて都響に客演したときのモーツァルトを聴いただけだけどあんまり良くなかった記憶がある。はたしてベートーヴェンは如何に?・・・というのが注目の演奏会。

 プログラムは交響曲第6番「田園」と5番(いわゆる「運命」ですね)という超名曲だけど、意外と実演に接する機会が少ない曲でもある。インバルは、ロマン派の曲を振るときは濃厚な味付けをする指揮者だけど、さすがにベートーヴェンでは濃厚な味付けは出来なかったようだ。インバルらしい部分もあったけど、基本的にはふつーの解釈の範疇だと思う。「田園」はもっと表題性を強調するかと思ったら意外とそうでもなかったし、5番も取り立てて強調するところもなかったように思う。都響も決して悪くはなかったし、この間まで音程の悪かった第一ヴァイオリンもきちんと整っていたように思う。

 ロマン派を得意とする指揮者は多いような気がするけど、古典をきちんと聴かせる指揮者は少ない。インバルもロマン派では素晴らしい表現をする指揮者だけれど、古典を振らせるととたんに口を噤んでしまう。どこに問題があるのか解らないけど、どこかにモーツァルトやベートーヴェンを聴かせて感動させられる指揮者はいないものだろうか?