インバル=都響の幻想交響曲

(文中の敬称は省略しています)


●97/05/19 都響の名曲シリーズである「プロムナード・コンサート」で、サントリーホールは9割以上の入り。指揮者はもちろんエリアフ・インバルで、曲目はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番(pf:児玉桃)とベルリオーズの幻想協奏曲というもの。

 前半のラフマニノフは映画音楽としても有名な曲だけど、実演に接して感動した試しがない。もちろん難曲なのだろうと思うけど、甘ったるい演奏が多すぎるような気がする。今日の演奏はインバルの指揮としては弛緩した感じがして、音のエッジが甘いうえに、どのような表現をしたいのか伝わってこない。インバルの意図がオケに徹底していないのだろうか、不満の多いサポートだった。さらにソリストの児玉桃も、音色のパレットに乏しく平板な演奏になってしまった。華奢な腕でかなり無理をして音量を出そうとしていたようだけど、それでもオケに埋もれてしまう部分が多くソリストと言うよりはオケの一員みたいな感じ。これはサポートにも原因がありそう。

 後半の「幻想交響曲」は、前半と変わって素晴らしいものとなった。どちらかというと純音楽的なアプローチよりは表題的な方向性を目指したもので、テンポ、音の強弱(ダイナミックレンジ)、各パートの色彩感にドラマチックな表情が濃厚につけられる。都響もインバルの鋭いタクトに良く応えて、大筋ではその意図に沿った演奏に仕上がったのではないだろうか。白熱した第5楽章が終わると会場は熱烈な拍手に包まれた。細かい部分ではさらに練り上げる余地は多いと思うけど、これだけの水準が常にキープできるのであれば私としては満足すべきだと思う。前回の来日から半年しか経過していないので、インバルの意図がオケに明確に伝わっているためだろうと思うけど、次回の来日は一年半後なので元通りになってしまうんじゃないかと思ってちょっと不安(^_^;;; とりあえずは24日のベートーヴェンに期待しよう。