高関健=新日本フィル

(文中の敬称は省略しています)


●97/05/06 5月としては異常に気温が高い今日、むさ苦しい渋谷まで出かけるのはうざったいし、オマケにメインの曲目が苦手なシューベルト。すっぽかそうか思ったんだけど、文化村に電話で予約したチケットの受け取りもあったので仕方なく(^_^;;; 高関健指揮NJPの定期演奏会を聴きにオーチャードホールへ行ったんだけど、やっぱり客席は空席が多かった。

 最初に第17回入野賞受賞作品の世界初演、バカ=ロベラの「未知の領域」が演奏されたんだけど、ほぼ完全に爆睡してしまったのでノーコメント。しかしそのあとに演奏されたシュニトケの合奏協奏曲第一番は、「文字通り」目が覚めるような演奏だった。ソリストに起用されたのはコンマスの松原勝也とアシスタント・コンサートミストレスの鈴木理恵子で、オケは弦楽合奏と特殊なコインをはさんだピアノとチェンバロが用いられる。この曲を聴くのは昨年7月3日の紀尾井シンフォニエッタ東京の定期以来2回目だけど、実に面白い曲である。バロック音楽やワルツやロマン派の曲まで引用しているのだけど、それをバラバラに分解して、さらにシュニトケの透徹した音の世界に昇華させることによって新たな音楽として生まれ変わっている。ソリストの2人は実の夫婦でもあるけど、音は均質に整えられるととも透明感があってとても綺麗。弦楽合奏も綺麗に分離して透徹した世界を構築し、音楽にストレスを書ける役割を担うピアノとのコントラストも鮮やかに描き出された。この手に作品は個人的に大好きだし、演奏も素晴らしかった。

 後半はシューベルトの交響曲第8(9)番「グレイト」。いわゆる「天国的に長い」交響曲と言われるだけに、個人的には「爆睡の友」となっている曲である。私は感動した経験のない曲だけにはっきり言って期待していなかったんだけど、その「期待」に反して高関の演奏は素晴らしかった。まずアンサンブルがとても綺麗に整っているし、テーマによって描き分けが鮮やか。優しい曲相の時はしなやかに歌い、威厳のある曲相の時は険しく、その流れがとても自然なのだ。高関の意図がオケに徹底されているのがよく解る。いや、シューベルトの交響曲がこんなに良いとは思っても見なかった。ペーター・マーク=都響を聴いてモーツァルトに開眼した経験のある私にとって、今日の演奏はシューベルトを見直すきっかけになるかもしれない。

 高関はちょっと地味目なイメージがあるけど、指揮者としての力量はかなりのものではないだろうか。奇抜さやはったりめいた音楽ではなく、とても誠実にアンサンブルを作り上げる。もっとNJP定期に登場しても良いと思うのだけど。

 さてこの秋からNJPは「すみだトリフォニーホール」をフランチャイズとする訳だけど、私は申し込んでいた「トリフォニー」のA/B両定期をキープすることが出来た。3階の一番後ろの方の席だけど、値段は安いし、経験的にはこの辺が一番音が良さそうなので満足。かなり希望者が増加したらしく、Aシリーズは会員席でほぼ満員、Bシリーズもかなりの売れ行きらしい。新規会員募集は狭き門になることが予想されるので、要注意!