ブルックナーはお好き?

(文中の敬称は省略しています)


●97/03/10 土曜日の14時から衛星放送Bモードライブで、朝比奈=N響のブルックナー交響曲第8番が放送されたので、気合いを入れてS−VHSとDATで録音録画した。音源は3月6日の定期演奏会のものだけど、改めて聞き直すと客席で聴いた音とだいぶ違う。マルチマイク録音らしく当日客席で聴いた音よりも輪郭やはっきりしているし、各声部がきれいに分離がしている。もっとも座った席が3階人民席と言われているところで、ステージから遠いため各声部が解け合った音しか聞こえてこないことが多いので、当然といえば当然だけど、NHKホールってステージに近い方が音が良いのかなぁ?

 ところで、ブルックナーの音楽ほど好き嫌いが分かれる作曲家も珍しい。このあたりの理由は宇野功芳が機会あるごとに書いているので(^^;;;二番煎じにするつもりはないけど、ブルックナー・ファンが絶賛した3月6−7日の朝比奈=N響定期でも爆睡している定期会員がいるのである。定期会員だと連続券で買っているので、あまり行きたくない演奏会でも聴きに来てしまうのだけど、私もブルックナーが苦手だという人の意見はよく解る気がする。やたらと繰り返しは多いし、演奏時間は長い、休止したと思ったら全く別の旋律が前後関係なく始まって、音楽の流れを中断してしまう。こーゆー作曲家は他にはいないでしょうね。

 その一方でブルックナー愛好家というのは凄い。他の作曲家にもファンは多いと思うけど、ブルックナー愛好家は、どの作曲家ファンとも違うのだ。ブルックナー自身が神への賛歌として作曲したように、ブルックナー愛好家もどこか宗教的なレトリックを駆使してブルックナーの音楽を語る。東海道新幹線の回数券を買って朝比奈の演奏会の度に東京−大阪を行き来し、果てはシカゴまで飛んでいってしまう。朝比奈の演奏会など典型的だけど、終演後の熱烈なカーテンコールはもうブルックナー教のミサと言っても過言ではない。しかも何故か男ばかりなのだ。ブルックナーのどこが良いのか解らない人にとっては「来てはいけない場所に来てしまったのではないか・・・?」「此処はどこ?私は誰?」状態に陥るのは必至なのである。

 このギャップをうめる合理的な理由はいまだ見つからないのだけど、私自身、以前はブルックナーが苦手だった。どこが良いのか解らない。ところが朝比奈の指揮したブルックナー交響曲第5番を聴いて開眼してしまった。それ以来、大阪のシンフォニーホールまで朝比奈を聞きに行ったこともあるけど、そのときの演目はベートーヴェンのエロイカや、チェルカスキーとの共演とかだったので、私はブルックナー愛好家というよりも朝比奈ファンに属するのかもしれない。朝比奈がタクトを置いたら、きっとブルックナーはあまり聴かなくなるだろうな・・・と思う今日この頃である。