小泉和裕=都響のシューベルト

(文中の敬称は省略しています)


●97/02/19 都響のシューベルト生誕200年を記念した定期演奏会(サントリーホール)で、指揮は首席指揮者の小泉和裕。非常にめずらしい選曲で、交響曲第2番とミサ曲第6番。聴衆は少な目で約6〜7割程度。

 シューベルトが17歳の時に作曲した交響曲第2番は、構成は若書きゆえの弱さを感じるけど、第一楽章はモーツァルト風、第4楽章はベートーヴェンみたいな響き、第2楽章はシューベルトの歌曲らしいチャーミングな主題が登場する面白さもある。第一楽章は、各パートのタテの線がまったく揃わずアンサンブルは全然ダメ。第2楽章以降はなんとか立ち直って、木管もそれなりに美しく、素直な演奏を聴かせた。ただ・・・何度も聴きたいと思わせる曲ではないと思う。

 休憩後はシューベルト晩年の曲で、ラテン語の合唱(晋友会)が主役となり、オケは伴奏として脇役に回る作品だ。この曲は練習を積んだと見えて、なかなか充実した演奏に仕上がった。合唱はいつものように厚みで押していたけど、欲を言えばミサ曲らしい透明感や粒立ちの良さがほしい。でも150人くらいの大規模な合唱団では難しいか? 独唱では吉田浩之のテノールが伸びやかで良かったほか、大間知覚、三縄みどり、郡愛子も粒ぞろい。ただ青戸知は声が聞こえず、不調だったのか? 作品的にも聞き応えがあり、交響曲第2番とは違って明らかにロマン派の世界に踏み込んだ音楽を構築している。もっと演奏されても良い作品ではないだろうか。