尾高=紀尾井シンフォニエッタ東京

(文中の敬称は省略しています)


●97/02/13 尾高忠明指揮、紀尾井シンフォニエッタ東京の第8回定期演奏会。このオケとしてはめずらしくドイツもののプログラムで、シューベルト交響曲第5番、モーツァルト協奏交響曲、ブラームスのセレナーデ第1番。

 生誕200年という事で頻繁に演奏されているけど、個人的にはシューベルトは鬼門である。歌曲は良いと思うし、それをテーマにした器楽も嫌いではないけど、交響曲はどこが良いのかよくわからない。この5番も例外ではなく、仕事の疲れも重なって15分ほど爆睡したので、コメントはパス! 寝るのには丁度良い曲である。

 協奏交響曲もしばしば演奏される曲だけど、私はそれほど良い曲だとは思わない。モーツァルトの天才性を感じさせる曲は他にいくらでもあるのに、なぜこの曲が・・・という感じなのだが、そんなに人気がある曲なんでしょうか? それはともかく、ソリストは景山誠治(Vn)と菅沼準二(Va)だったけど、ヴィオラの音が艶や膨らみに乏しく、音程もちょっと怪しい。音が付いていくのがやっと・・・という感じで、音楽的に楽しめる水準には達していなかったと思う。ヴァイオリンとの呼吸もイマイチで、手探りで合わせているような感じ。ヴィオラをヴァイオリンと同じ水準で弾きこなすのは難しいとは思うけど、ソリストとして登場する以上はもう少し水準をそろえてほしい。 

 後半のブラームスのセレナーデ第一番は演奏される機会が少ない曲。ブラームスが24歳の時の作品だけに、晩年の交響曲と比較すると音楽的な深さ、奥行き、構成の確かさは、遠く及ばない。しかし尾高=KSTが奏でる「セレナーデ」の響きは明らかにブラームスならではのもの。ブラームスは24歳の時、すでに一つの響きを獲得していたことがわかる。この曲に関してはなかなかの演奏を見せてくれた。音量のコントロールをもう少しきめ細かくしてほしい点もあるけど、曲が進むにつれてアンサンブルが整ってきた。定評のある弦楽器はもちろん、木管の音も良かったけど、安定したホルンの音は特筆に値する。曲が曲だけに、途中、退屈する部分もあったけど、尾高=KSTは最善を尽くした演奏をしたと言っていいんじゃないだろうか。