まず「カヴァレリア」。四角?関係による刃傷沙汰をテーマにした作品だけど、美しい旋律がこれでもかっ!と惜しげもなく投入された作品。個人的にはまず管弦楽に耳がいってしまうんだけど、いささか不自然な節回しはあったけど感情を込めたドラマチックな演奏で、まずまずの及第点。しなやかで流れるような演奏が好みなのだけれど、管楽器の音がイマイチで流麗と言うには無理があったけど・・・。歌手ではサントゥッツァを歌った持木文子が力演。ドラマチックで役柄になりきった舞台姿はとても良かった。川上洋司のトゥリドゥもう少し力がほしいけど、なかなか綺麗な声。アルフィオの勝部太は調子がイマイチだったのか、最初は声が出ていなかったけど後半でつじつまをあわせた。ローラの高橋真美はまったく知らなかった歌手だけど、今後がたのしみ。舞台装置は二期会としては豪華なもので、藤原と比べても劣らないと思う。中村の演出は基本的のはオーソドックスなものだけど、馬車屋のはずのアルフィオがマフィアみたいだったり、ちょっとした工夫も見られた。
つづいて「パリアッチ」。これも不倫のもつれによる刃傷沙汰をテーマにしたもの。舞台装置は「カヴァレリア」と同じものの使い回しだけど、コカ・コーラの看板やジープ・軍用トラックが置かれていて、19世紀から戦後のイタリアに時代を移してしまった。これも工夫の一つだけど、時代を移した事によるメリットが見えてこないのが残念。時代を移すくらいなら、「現代」にしてテレビドラマの収録のシーンに舞台を移すとか、もっと徹底的に演出を変えてほしかった。歌手ではトニオの直野資が好演で、前口上も高音部にちょっと苦しさを感じた他は実に立派。今、もっとも充実しているバリトンの一人だ。カニオの田口興輔は、これまで聴くのを避けていた歌手だけど、今日はなかなか良かった。高音部の輝かしさとテンションの高さは見事だけど、ちょっと音程が下がると急に声が不安定になってつながりが悪くなるのは難点。でも、この日の良さは声よりも役柄になりきった迫真の演技で、会場の拍手を集めていた。ネッダの松田昌恵、ペッペの藤川泰彰、シルヴィオの大島幾雄も不満のない出来映え。
これまでの二期会の好演は主役級の歌手のうち誰かが不調と言うことが多く、フラストレーションが溜まりがちだったけど、今回は大きな不調を感じさせる人がいなかったのが幸い見応えのある舞台に仕上がった。演出はちょっと中途半端でひと工夫を要するし、オケはドラマチックだけど繊細な表現では不満を感じさせる部分が多いけど、日本人歌手だけの上演を続けている二期会だって十分な舞台を見せることは出来ることを改めて実証したと思う。しかし今後の二期会の公演スケジュールを見ると、・・・やっぱり不安を感じざるを得ないなぁ。