プログラムを見るとヘルマン・プライは1929年生まれとあるから、今年で68歳になる。しかしプライから奏でられる声を聴いて、その年齢を感じる人がどれだけいるだろうか。高温域はちょっと苦しいし、かつての録音の声と比べると衰えは隠せないけど、その声は「立派」の一言である。しかし「美しき水車小屋の娘」は、若き娘に恋する青年が自らの心を歌った曲である。その心を歌うには、やはり無理があるような気がする。自分の心情を語っているのではなく、村の語り部が昔話をしているように感じてしまうのは、彼の声がもやは青年のものではないからだろう。
しかし、それさえ気にしなければ、彼の語り口は見事で、要所の盛り上げ方はうまい。若き粉ひき職人の旅立ち・恋と失恋・自殺に至るまでの物語は、静かに幕が下ろされた。しばしの静寂の後、ホールは盛大な拍手に包まれたけど、これは彼の語り口のうまさに与えられたものだろう。
ちなみに今日のコンサートは約9割の入り。チケットの価格もS席5.000円からC席2.000円までとリーズナブルである(公演時間は1時間程度と短いので、時間単価に直せば高いかもしれないけど・・・)。あと4回のコンサートが残されているけど、チケットはまだたくさん残っているらしいので、興味がある人は行ってみる価値はある。