VPOのニューイヤーコンサート

(文中の敬称は省略しています)


●97/01/01 今、テレビでウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを見終えたんだけど、相変わらず華やかですね。金色に輝くムジークフェライン、新年を祝う花束、そのホールを満たすVPOのワルツ、一度はナマで聴いてみたいなぁ・・・とは思うけど、裏チケット価格が20万円位というのを聞くとこりゃ駄目だ、と思ってしまう。

 数年前までテレビでVPOニューイヤーコンサートを聴いても、なんかピンとこなかった。確かに良いんだけど、そんなにお金を出すほどのものなの?・・・という感じだった。ところが1993年のVPO来日公演(指揮・小澤征爾)で認識が変わってしまった。運良く一番安い9.000円のチケットが手には入って、サントリーホールまで聴きに行ったのだけれど、メイン・プロの演奏は全く記憶に残っていない。覚えているのはアンコールのJ・シュトラウス喜歌劇「こうもり」序曲だ。

 ただ驚愕!あるのみ。この曲は録音だけでなくナマで何回も聴いたことがあるけど、それらとは全く違う演奏だった。指揮台の上に指揮者がいることはいるのだが、そんなことは意識にない。超絶的なスピードの演奏していたけど、この速度だと指揮者の指示を見ていたら間に合わないだろう。一糸乱れぬ演奏で奏でていく姿は、まるで一つの有機物=生命体のようだ。それにあの音、このオケはウィンナ・ワルツを演奏するために存在するんだ・・・と思わせるほど。こんな演奏を聴いてしまうと、メインプロは手抜きとしか思えないけど、そんなことはともかく、マジに演奏したときのVPOは凄いとしか言いようがない。あとクライバーの「薔薇の騎士」も第2−3幕はマジだった。

 VPOのライバルとされるベルリン・フィルにはあまり良い思い出がない。聴いたことは92年に1回しかないんだけど、アバドが常任指揮者に就任して初めての来日でブラームス・チクルスだった。私は4番の日に行ったんだけど、アンサンブルがめちゃくちゃ。個々の奏者がメチャ巧いのは解るんだけど、好き勝手やっているものだから、全然ブラームスしていないのだ。この時期は、まだアバドがオケを掌握しきっていなかったのかもしれないけど、それ以来、数万円払ってBPOを聴きに行く気がしなくなってしまった。

 どちらのオケも来日すればあっと言う間に売り切れてしまうけど、良い演奏に出会える確率は値段の割には低いような気がする。5.000円以下のチケットならハズレでも笑って許せるけど、さすがに3万円近いお金を払ってハズレだったら笑えないなぁ。本気で演奏する保証があるなら、それなりの価値があることは認めるけど、リスナーとしては「行くべきか・行かざるべきか」複雑な心境ですよね。私としては、オケの名前で選ぶよりは、指揮者で選ぶほうがハズレが少ないような気がします。